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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎アトピー性皮膚炎は、かゆみと湿疹(赤いブツブツ、ガサガサと乾燥する、小さな水ぶくれ)が何年にもわたって慢性的に繰り返される病気です。皮膚が持っているバリア機能が低下したり、免疫学的要因が結びついて外界の物質による刺激が加わったりすることで発生します。「アトピー素因」がある方によく見られる湿疹で、症状の軽減と増悪を繰り返します。
「アトピー素因」とは、両親にアレルギー性の疾患(アレルギー性鼻炎や結膜炎など)がある状態や、IgE抗体(アレルギー反応に関する抗体)を作りやすい体質である状態です。
アトピー性皮膚炎の悪化因子ですが、乳幼児時代の場合は食物アレルゲン、成人の場合はダニ、ハウスダスト、花粉などの環境アレルゲンなどが挙げられます。また、汗、空気の乾燥、ストレスも刺激として悪化させる要因になります。

主な症状・診断基準

日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診断基準には、以下の要素が含まれています。

  • かゆみを伴った湿疹
  • 湿疹の度合いは、乾燥肌程度からジュクジュクしたものまで多岐にわたる
  • 湿疹が体に左右対称にできる
  • 湿疹の軽減・悪化が交互に繰り返される

また、発病する時期に応じて、3つのタイプに分けられます。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎

生後数ヶ月から湿疹が見られます。湿疹は頭部、髪の生え際、口周りなど、顔面を中心に発症しますが、首の周辺や背中、おむつ周りに現れることもあります。
湿疹は離乳食開始期の5~6ヶ月にピークを迎え、その後改善することが多いです。顔面の湿疹は1歳頃に解消し、通常1歳半~2歳で一旦落ち着きます。

子供のアトピー性皮膚炎

小児のアトピー性皮膚炎は、最も多く見られるタイプです。およそ2歳頃から全身の乾燥が始まり、首、肘・膝の内側などを中心に湿疹が起こります。
血液検査では、食物アレルゲンに対して陽性反応が見られることがあります。一旦成長して思春期を迎えると、改善されるケースがほとんどです。

大人のアトピー性皮膚炎

大人のアトピー性皮膚炎は、乳幼児期の症状が一旦改善した後、20歳前後から再び悪化することがあります。また、小児期には皮疹が見られなかったのにもかかわらず、20歳を超えて発症するケースも存在します。血液検査では、ハウスダストやダニ、花粉などの環境抗原に対する高い陽性反応が見られます。完治が難しく、一生治療を続けなくてはならなくなる可能性が高いです。
また近年では、高齢者のアトピー性皮膚炎も報告されています。

検査方法

アトピー性素因や悪化因子を特定するために、非特異的IgE検査や特異的IgE検査(アレルゲン39項目)などの血液検査を実施しています。また、アトピー性皮膚炎の度合いを測定するため、TARCの血液検査にも対応します。

TARCについて

「タルク」と読まれる血液検査「TARC」は、アトピー性皮膚炎の度合いを評価するために行われる血液検査です。平成20年7月1日から保険適応となり、一般の医療機関でも行えるようになりました。
アトピー性皮膚炎の血液検査として普及されている特異的IgE検査や非特異的IgE検査は、アレルギーに対する反応を知るのに役立っていますが、現在の皮膚状態を反映していません。治療後、アトピー性皮膚炎が改善した場合でも、IgE検査の結果は変わらないため、TARCの値が現在の状態を反映し、重症度を評価する上で重要とされているのです。
皮膚が改善すると、TARCの値も一緒に下がります。

TARCを受けるメリット

定期的に受けると、治療の効果がきちんと得られているかどうかをチェックできます。皮膚の状態が検査値で反映されるため、治療目標がより具体的に設定できます。
見た目が良くなっていても、TARCで高い数値が出た場合は、炎症が残っていると見なされます。

費用

検査は健康保険で、月に1回まで適用されます。以下の表は、3割負担を想定した際の金額です。
初診や処方料などは別途ご用意ください。2年に1度の診療報酬改正により、費用が変更される可能性もあります。

治療方法

アトピー性皮膚炎は短期間のうちにすぐ治癒できるものではありません。ただし、治療を続けることで症状を抑えることはできます。

ステロイド外用薬と保湿剤の塗布

ステロイドの外用には「リアクティブ療法」と「プロアクティブ療法」があります。リアクティブ療法では、症状がひどい時にのみステロイドを塗り、プロアクティブ療法では、ステロイドの使用を徐々に減らし、最終的には予防的に週1~2度塗ることで症状をコントロールします。患者様の症状に応じて、どちらの方法が適しているか判断します。
当院ではステロイドを全く使用しない「脱ステロイド療法」に対応していません。ただし、保湿剤に関する相談や、保湿剤だけでの治療を希望される際は、お気軽にご相談ください。ステロイド薬の使用を最小限にしたい患者様には、エキシマ光線療法の併用を提案します。

免疫抑制剤の外用薬、JAK阻害薬のコレクチム軟膏薬、その他内服薬など

当院では重度のアトピー性皮膚炎に対して、ネオーラル(シクロスポリン)を服用する治療法を行っています。なお、デュピルマブ注射、オルミエント(バリシチニブ)やウパダシチニブの内服治療には対応していません。そのため必要に応じて、他院へご紹介することもあります。

エキシマ光線療法

当院では、ウシオ電機の「セラビーム®UV308」と「セラビーム®UV308mini」を使用しています。これらの装置は不要な短波長をカットし、健康な皮膚へのダメージを抑えつつ、308nmの紫外線を照射することができます。
特に、ステロイド外用薬を塗布し続けても改善できなかった方に有効とされており、光線療法と併用すれば、ステロイド外用剤の量を抑えることができます。